Player's Column 長嶋玲奈/手応えと課題を胸に前半戦ラストの試合にどう臨むか

 

トップ登録をされて10年目を迎えた長嶋玲奈は、コンスタントに出場を続け、今季のチームの好調を支えるパフォーマンスを披露している。

 

リーグ10試合中、9試合に出場。メンバーから外れたのはコンディション面で大事を取った1試合のみで、出場した9試合のうち8試合にフル出場している。

 

開幕前ーー。

 

副キャプテンに就任した彼女は、もう自分がチームを支える側にならないといけない、と思いを強くしてシーズンに臨んでいた。

 

チームは現在、首位INAC神戸レオネッサに勝ち点2差という好位置につける。

 

選手たちは監督の堀孝史が提示するサッカーを吸収し、チームの大枠の中で、個性を発揮できるシーンが増えてもいる。

 

あと1試合でリーグの半分の日程を消化するいま、ここまでのチームの戦いを長嶋はどう見ているのか。

 

話を聞いた。

 

 

◆刺激を受けて始まったシーズン◆

長嶋はシーズンスタートからここまでを次のように振り返った。

 

「アメリカツアーでシーズンがスタートして、今まで戦ったことのないチームと戦う経験ができました。すごく刺激を受けてスタートして、その中でもちろんまだまだ足りない部分というのも見つかりましたが、それを改善しながら色々と試行錯誤してここまで来た感じです」

 

「その中でリーグが始まって、最初は課題という部分もたくさん見えていましたけど、いまあと1試合で前半戦が終わるというところまで来て、いろいろできた部分もありますし、まだまだやらなければいけない、という部分も感じています」

 

 

 

◆プレーに宿る新たな思考◆

 

手応えを感じているのは、監督の堀孝史が提示する大枠のオーガナイズがある中で、相手を見て駆け引きをし、トレーニングで積んだ選択肢を選手たちが選び取っていくサッカーに、フィットしつつある感覚があるからだ。

 

「以前も考えていなかったわけじゃないんですけど、その場の状況でプレーしていた印象でした。今はすごく考えてプレーするようになったので、それが攻撃のよいシーンにつながったときはやっぱり楽しいという感覚になります」

 

その印象的なシーンの一つは、さいたまダービーであるRB大宮アルディージャWOMEN戦の先制につながったPK獲得のシーンだろう。

 

前半12分、相手のゴールキックを回収した後、伊藤美紀が長嶋にボールを落とす。長嶋は、島田芽依のディフェンスライン背後への動きを見逃さず、ワンタッチで約30m先の相手右センターバックの脇にボールを送った。

 

インスイングに掛かったボールは、相手センターバックと相手GKから逃げるような軌道を描き、絶妙なタイミングで島田につながって相手GKのファールを誘った。

 

 

「真ん中過ぎるとキーパーが出てこられちゃうのと、シマ(島田)もあそこのスペースをタイミングよく狙って動き出してくれたので、うまく使えたかなと言う感じです」

 

そして、もう一つ、このシーンでは長嶋の日ごろ意識している“見る”技術が生きていた。

 

「近くを見すぎると遠くが見えなくなるので、遠くを見ることを意識しています。遠くを見られれば手前の選手は自然と見えて、遠くも近くも選択肢が得られます。今のサッカーは、ワイドにスピードのある選手がいるので、そこに一発で行けたらチャンスにもつながるので、(遠くを見ることを)より意識もしています」

 

大宮戦の先制は、長嶋の日ごろの研鑽と技術、チームの形が組み合わさって生まれたシーンだった。

 

 

◆まだないものを予測したプレー◆

 

 

そして、もう一つここ最近で印象的なシーンがあった。

 

前々節のAC長野パルセイロ・レディース戦のワンシーンだ。※最下部に映像あり

 

前半32分、後藤若葉平川陽菜からボールを受けようとしたとき。

 

長嶋は、後藤にプレッシャーを掛ける相手FWの背後に移動するため動き出した。おそらく後藤の視野から消えるような動きになったはずだ。

 

だが、次の瞬間、後藤はその相手FWの背後のスペースにワンタッチでボールを送る。長嶋にボールがしっかりとつながり、チームは前進をして、クロスまで上げて攻撃の形を作った。

 

その瞬間にはなかったパスコースが、次の瞬間に生まれるであろうことを、長嶋、後藤が互いに理解し、つながったシーンだった。

 

「最初の段階で相手が自分のコースを消してきてたので、若葉からのパスコースがなかったんですよね。それで1つでも多く選択肢を作れたらなという感じで、タイミングよくあそこに入れて、若葉もしっかりそこを見てくれていました」

 

「若葉のセンスですね(笑)」

 

長嶋は冗談っぽくそういって笑った後、次のように続けた。

 

「堀さんもやっぱりその出した後の動きとか、そういうことを強く言っていますし、自分に出されなくても1つの選択肢になればいいと考えて動いています。それによって相手がどう動いてくるかというのも変わるので」

 

 

◆1試合を通じてよいサッカーを◆

 

一方で、課題はここ3試合、後半に入ったときに相手に流れを渡してしまっている点だ。

 

「やっぱり疲れてくるとお互いの判断が合わなくなったり、ミスが増えたり、というところで流れを相手に渡してしまっている印象です。前半に良い戦いができているからこそ、勝てていますけど、それがもしできなかったときには、厳しくなっていくので、1試合を通じて、しっかりと自分たちのよいサッカーを見せられたらと考えています」

 

そして、長嶋らしく少し砕けた、個人としてのちょっとした焦りも口にした。

 

「個人的には、シーズン当初は後半の最後の方にすごく疲れが見えたりしていたんですが、今は走れていますし、コンディションも上がってきている感覚があります」

 

「その中で、いろいろな選手がゴールを決めているので、私はまだノーゴールですし、ちょっと焦りがあるので、ゴールも決めたいですね(笑)」

 

 

◆前半戦最後の試合をどう戦うか◆

 

 

最後に次節、セレッソ大阪ヤンマーレディース戦について聞いた。

 

ハーフシーズンが終わる段階で、首位と勝ち点2差の3位という好位置に付けた中、どのような気持ちで臨むのか。

 

長嶋は冷静に、しかし、しっかりとした口調で話した。

 

「(今の順位は)特には気にしていないです。どの試合も落とせないのは変わりないので。上の順位は混戦になっているので、そこは意識することももちろんありますけど、周りのチームがどうこうではなく、やっぱり一試合一試合勝ちにこだわるというのが大切だと考えています」

 

チームとして一戦必勝で臨む今季、大切なのは、その都度、目の前の1試合であることに変わりはない。

 

「(C大阪戦は)前半戦最後の試合というのもありますし、優勝するには絶対に勝たなくちゃいけない1試合です。そのためにはやっぱり最後の最後まで集中を切らさずに、早めの段階で点を決めて、1試合を通してみなさんに楽しんでもらえたらと思います」

 

前半戦の最後に、ここ数試合で出た課題を解決した姿を見せられれば、後半戦にもさらに勢いを持って入っていくことができるだろう。

 

時に中央に位置してボールを前進させるルートを作り、時に遠くを見る眼とキックの技術で一気にビッグチャンスを演出する。

 

静かに攻撃に色を添える背番号13のDFがどのようなプレーを見せてくれるのか。期待して見てほしい。

 

(文・写真/URL:OMA)

 

 

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