FINASH

12/20 I神戸戦 Pick Up Player【宝田沙織選手】

2025-12-19


海外での4年半に及ぶプレーを経て、セレッソ大阪ヤンマーレディースに復帰して半年が過ぎた。足元の技術、収める力、視野の広さ、パスのレンジと精度、展開力。どれをとってもチームの中では一つ抜けたクオリティーを有していることは明らかだ。「中央で時間を作れることはチームにとってすごくプラス。ゲームをコントロールするために中盤で起用しています」(松田岳夫監督)と、現在はその力を主に中盤で発揮している。皇后杯の勝ち上がりにおいても、その力は遺憾なく発揮された。3回戦のノジマステラ神奈川相模原戦では、1本のパスから百濃実結香の決勝点を導いた。準々決勝の朝日インテック・ラブリッジ名古屋戦でも中央からの縦パスがスイッチとなり、和田麻希新井萌禾とつながり、和田の決勝点が生まれた。「沙織さんは絶対に見てくれると思ったので、信じて裏に抜けました」(百濃)、「サイドから中に入ってゴールも近かったので、『スルーパスが来たらいいな』と思っていたら、沙織さんからいいパスが来ました」(和田)。試合後の各選手のコメントからも、チームメイトから全幅の信頼を寄せられていることが伝わってくる。

ただし、この半年のプレーについて自身に振り返ってもらうと、「正直な気持ちで言うと、まだ全然できていない印象です。やりたいことも、なかなかできていません」という言葉が返ってきた。このあたりは表現が難しいが、宝田が周囲に合わせ、チームの底上げに寄与している部分も見受けられる。「自分の性格的なところでもあるのですが、周りを使ったプレーの方が楽しいし、そういうプレーが好き。周りに合わせているつもりはないですが、合わせ過ぎて自分を出せていない部分もあるのかなとは感じています。そこは自分を出しながら、チームのみんなにも『付いていきたい』と思ってもらえるプレーをしていきたい意識はあります」。優雅なプレーと同様、内面の奥ゆかしさは宝田の魅力でもあるが、勝利へ向けて、プレーヤーとしてのエゴを前面に押し出す姿も見たい。松田監督がよく使う表現の一つに「リミッターを外せ」という言葉がある。それは宝田にも言えることであり、そのリミッターを外したプレーに周りが呼応し、「相乗効果」(松田監督)でチーム力が上がっていくことが理想だ。「自分がやりたいプレーを出して、チームも底上げできたら、セレッソらしい楽しいサッカーももっとできると思うし、勝てる試合ももっと増えると思います」。ここからさらにチーム力を向上させていくために、自身もさらなる高みを目指していく。ゲームコントロールとともに、ゴールに関わるプレーも彼女に求められているタスクの一つだが、皇后杯のサンフレッチェ広島レジーナ戦ではついに加入後初ゴールを決めた。「相手に当たって入ったゴール。理想ではない」と苦笑いしつつ、「気持ち的には少し楽になった」と本音も。広島戦後のミックスゾーンでは、「最後の迫力、シュートを打って終わることはまだ課題。ゴール前までは行けているけどシュートまで行けていない場面もある。そこはもっと貪欲にいきたい」と締めた。これはチームについて語った言葉だが、自身に向けても、「ゴールはもっと意識していきたい」と言い聞かせた。同期の脇阪麗奈も、「ゴール前ではもっと貪欲になってほしい。打てるし、上手いし、(決める力を)持っているのに、遠慮してパスを選択する場面もある。それはもったいない。できるからこそ、そう思っているので、本人にも言っています(笑)」とエールを送る。

今節のINAC神戸レオネッサ戦では、中盤の攻防や球際の戦いで負けないことも試合の主導権を握る上では欠かせない。前回の対戦で最もI神戸の強さを感じた部分として、「攻守の切り替え、個の強さ、奪い切る力」を挙げたが、「海外の選手も個の強さや速さはあったので、自分としては負けているとは思っていません」と自負も覗かせた。「前回、あのような試合をして悔しい思いをしたので、ホームでは必ず勝てるように。たくさんの人が観に来てくれる試合でセレッソらしいサッカーを出して勝つことができれば、今後も見に来て下さる人も増えると思います。自分の力もしっかり全部、出し切りたい」。アウェイでの悔しさを晴らすべくリベンジを誓うチームの中心に立ち、打倒INAC神戸を果たす。