Face vol.10「自分をうまいと思ったことはない」丹野凜々香が語る、これまでの道程
2026-02-21
2025/26シーズンの選手たちの素顔や試合に臨む姿を伝える不定期連載『Face』。第9回は、今季、リーグ戦6ゴールと数字での結果も残す丹野凜々香選手です。
ぜひ、ご一読ください。
「この中だったら、まとめ役、背番号26番、丹野凜々香です!よろしくお願いします!」
公式YouTubeのゆるト〜クというコーナーで、高橋はな、長嶋玲奈、櫻井まどかと共演したときの丹野の挨拶のシーンだ。
終始、気の置けない仲間とふざけつづけたこの回は、他の選手だけではなく丹野らしい面白さやキャラクターが表現されたものとなった。
昇格して5シーズン目。堀孝史が監督に就任して以降、そのポテンシャルを徐々に発揮し、重要な試合でもゴールを決めるなど、結果も残している。
ピッチ内外で充実している様子が見て取れる丹野。
だが、こうした場所にたどり着くまでには、4年あまりの歳月を掛けなければならなかった。
彼女は、どのようにこれまでを積み重ね、ここまでたどり着いたのか。話を聞いた。
「うまい選手だと思ったもことない」
「自分をうまい選手とは思ったこともないです。あんまり言われたこともないので」
丹野は自身のプレーについて聞かれると、静かにそう答えた。
2025/26シーズンの前半戦。SOMPO WEリーグ第2節のアルビレックス新潟レディース戦でリーグ初ゴールを挙げると、その後も日テレ・東京ヴェルディベレーザ戦の決勝点も含め3試合連続で得点を記録。今季ここまでにリーグでは6ゴールを挙げ、アシストも含めれば、チームの攻撃の一翼を十分に担っていると言っていいだろう。
だが、本人に浮かれるような気持ちはみじんもない。
「中学生でジュニアユースに入ったときは、自分が一番うまいと思って入ってきたんですけど、それもすぐ、そういう気持ちはなくなりました。周りがすごくうまくて 苦笑」
「だから私は、うまくはないけど、ま、頑張ってるよね、みたいな感じで、なんとか生き残ってきた、という印象です」
実際、彼女がトップチーム昇格後に歩んできた道のりは、平坦なものではなかった。
2022年に昇格したが、その年の出場数はゼロ。
その後、シーズンごとに出場数で見れば少しずつ増えていたが、出場時間で言えば、本当に限られたものだった。
「昇格して試合に絡めそうにもないときは、昇格という選択自体が間違っていたのかなと思っていました」
丹野は当時の苦しかった心中を振り返る。
「覚悟を持って昇格したつもりでしたけど、やっぱり練習参加のときとは違うんだなと」
もちろん練習でも手を抜かず、常に試合に出るイメージを持ち続けてはいた。
だが、結果につながらず、忸怩たる思いだけが積み重なっていった。
「黒い影が見える」
最も苦しかった時期について、丹野は印象深いエピソードを語ってくれた。
いつだったか、確かな時期は覚えていない。だが、出場機会に恵まれなかった2、3年前のことだ。
心の中では大学という選択まで含め、移籍を考えていた。
「誰にも言わず、家族だけには相談していたときに、梢さん(安藤)が、『なんか後ろに見えるんだけど』みたいなことを言うんですよ。『黒い影が見える』みたいな」
そのときの安藤が言っていたのは、「プレーに迷いがあり、ピッチ外でも何か感じるものがある、変なこと考えていないよね」という内容だったという。
だから「いや何もないです」と即座に否定したが、その後も声を掛けられ、結局シーズン後のクラブとの面談の前には正直に話をした。
そのときに「このクラブはそんな簡単に試合に出られるチームじゃないし、誰でもプレーできるクラブじゃない」と言われ、また他の先輩の意見も聞くうちに、自分の視点が外に向いていたことに気づいた。
「移籍する、しないとか、まずは自分の考えをあらためようと思いました。試合に出られないことを自分以外に理由付けするのではなく、まずは力を尽くして、出られたときに自分の力を発揮できるように頑張ろうと」
外に向いていた矢印を、自分に向けることができたのだ。
「もう1年頑張ると決まったあとには、梢さんから、『もうなんも見えないよ』みたいなことを言われました 笑」
「もう監督変わって無理だったらほんとに」
しかし、丹野は、その後もなかなか多くの出場機会をつかめなかった。
昨シーズン、2025年2月に沖縄で行われたトレーニングキャンプでは、レギュラー組と練習すら一緒にできないことがあった。
ユースの選手や新加入の選手たちとプレーする日々。
「リーグが再開したら試合に合わせていくし、もっと食い込んでいくのが難しいじゃないですか。だからもう選択肢に入っていないのかなって」
だが、転機が訪れる。
2025年3月下旬に監督が交代し、戦い方に変化が訪れたのだ。
練習メニューも一気に変わり、ゼロから競争が始まった。
「新しいメニューとかが増えて新鮮でした」
そして、コーチ陣からもすぐにこう声を掛けられた。
「リリカの良さは、このポジションややり方であれば、これだけ生かせるんだよ」
提示されるサッカーがあり、その中で掛けられるコーチング。
プロリーグに所属する中で、監督が変わるというのはこういうことなのか。丹野は驚きと共に実感した。
だが同時に、これが最後のチャンスだとも感じていた。
「監督が変わって、この状況でポジションをつかめないようだったらほんとにもうここ(浦和)ではできないと思っていました」
変化する環境の中で、彼女は覚悟を決めていた。
「練習でやった形」が試合に
堀の提示するサッカーを、丹野は吸収していった。
昨シーズン終盤は連続で先発出場し、今季も継続して出場を続けている。
丹野は言う。
「練習でやった形、試合をしていても、練習で見た風景が本当に多くて」
センターバックからのパス、ニアへの走り込み、マイナスへの折り返し。堀が施した練習メニューで体験したことが、試合でも再現される。
「そういう楽しさも持ちながらやれていると思います」
個人としての成長だけでなく、チームとして感じる手応え。
だが、それでも彼女は自身について聞くと、「まだまだ」と応える。
前半戦の功労者の一人、と言われてもおかしくはないが、自身の足りなさを十分に理解しているのだ。
そして、丹野らしく次のようなエピソードで、その裏付けを語ってくれた。
「映像を使いながら、選手それぞれ個別に前半戦の振り返りがあったんです。そのとき、寺さん(寺口コーチ)から、まどかが、私とまどか(櫻井)の2人が一番、切り取る課題のシーンが多かった、と言われたみたいです 苦笑」
「まどかと話していて、まあ、11人のスタメンの顔ぶれを見たら、そりゃ、私たち2人が一番多くなるか、という話になって」
「私はうまい選手じゃないですから、そりゃそうだよねって、受け止めています」
試合に出続けているからこそ、課題も多くなる。その事実を、丹野は前向きに受け止めている。
「大事な仲間」
そんな丹野にとって、レッズレディースとはどんな存在なのだろうか。
少し考えて、はにかみながら彼女は答えた。
「私自身は、人間が好きなんですよね」
照れ隠しのように、「動物はあんまり好きじゃないんですけど」と加える。
「だからほんとに好きな人たちと、一緒の目標に向かって喜んだり、悔しがったりできること。それが本当にありがたいし、本当に大切な仲間だなと思います」
だからこそ、キャンプ中、新加入選手にも、丹野は積極的に声を掛けた。
「自分がうまいと思っていないので、自分よりみんなうまい選手で、みんなに活躍してもらわないと、私も力を出せないから、というのもあります 笑」
後輩へのバックアップを、打算で覆い隠す。
それがまた、彼女らしかった。
再開に向けて
リーグ再開に向けて、丹野にとっての課題は明確だった。
「ラストパスの質。ゴールにつながる最後のところのパスの精度と、あとは細かく言うと、ボールの持ち方です。相手の(プレッシャーの)矢印を折るとか、そういうボールの持ち方ひとつの細かいところを、コーチングスタッフのみなさんからも言われているので、それを意識しています」
前節悔しい敗戦を喫したチームは、それでもまだ首位INAC神戸レオネッサに勝ち点3差の2位にいられた。I神戸も敗れたためだ。
「チームとしてはこれ以上1試合も落とせないし、ほんとに上位3チーム、勝ち点を落としたチームが優勝争いから抜けてしまうと思うので、新しい仲間も加わったし、そういう切磋琢磨をしながら一戦必勝で頑張っていきたいと思っています」
持ち続けている使命にも似た思い
インタビューを通して、彼女から感じた印象は、地に足がついている、というものだった。
ピッチ内外の充実ぶりからすれば、浮かれるような発言があっても不思議ではないだろう。
だが、彼女から伝わってきたのは、一貫して「もっとやらなければならない」という現実をしっかりと見据えたものだった。
その理由についてたずねると、彼女はこう話した。
「育成からこのクラブでプレーさせてもらって、トップに上がってからも5シーズン在籍させてもらっているじゃないですか。中学生のころから、浦和駒場スタジアムで活躍している先輩たちを見て、みんな結果を出して、レッズだけじゃなく、海外とか代表でもプレーしています。
そういうのを見ると、私もそれに続かなければと思いますし、それくらいやるのが普通だと思っているんです」
「だから、前半戦くらいの貢献は当たり前だと思っていますし、もっと前からやらなければいけなかったと感じています」
彼女には、支えてくれた方々やクラブへの思いはもちろん、道を開き続けてくれた先輩たちへの感謝とそれを自身も続けていかなければならないという使命にも似た思いがあるのだ。
2月22日、三菱重工浦和レッズレディースのホームマッチは、AC長野パルセイロ・レディース戦となる。
敗れた後、どのようなリバウンドを見せられるか、内外に示さなければならない。
その試合で背番号26のアタッカーが、どのようなプレーを見せ、チームの勝利に貢献してくれるのか。
ぜひ、期待とともに見てほしい。
(文・写真/URL:OMA)

Faceこぼれ話01
インタビューを通じて、本編に入らなかったエピソードを紹介させていただく。
彼女は、YouTubeなどで丹野Pとして、選手の裏側のシーンを撮影して届けてくれている。
そうしたシーンを見ていると、とても明るく、ふざけるのが好きな性格、という一面が見て取れる。
しかし、その取材現場や編集でカットされているシーンを見ていると、彼女が他の選手へとても気遣いがあり、真面目な選手だということがわかる。
インタビュー中、そのことに触れると、こんなエピソードも披露してくれた。
「カップ戦のノジマステラ神奈川相模原戦で美紀さん(伊藤)がカウンターから点を取ったじゃないですか。あのとき、得点した後、私、美紀さんを抱っこして喜びましたよね。
オフィシャルの動画撮影の人がいる位置がわかっていたので、クルって回って、美紀さんの顔が映るように動いたんですよ 笑」
「ローリーの得点のときも、ローリーにカメラが向こうだよって!ほんとは、カメラの前にまで行きたかったんですけど 笑」
ぜひ、彼女のそうしたピッチ上で見せる隠された気遣いも見てほしい。

この原稿は、レッズレディースパートナーであるStoryHub社のプロダクトを活用し、人とAIが共創して作成させていただいております。
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